相続放棄を考えるときに知っておくこと
「実家だけいらない」はできません。相続放棄はすべての財産を手放す手続きで、原則3か月以内です。2023年の改正で変わった管理の責任もあわせて説明します。
更新:2026年10月18日
相続放棄とは
亡くなった人の財産を、プラスもマイナスも含めて一切引き継がない手続きです。家庭裁判所に申し立てます。放棄した人は、はじめから相続人ではなかったことになります。
「家だけ放棄」はできない
いちばん多い誤解がこれです。相続放棄をすると、家だけでなく、預貯金、株、車など、すべての財産を受け取れなくなります。 売れそうにない家だけを手放したい場合は、相続放棄ではなく、売却、隣地への譲渡、相続土地国庫帰属制度などを検討します。
相続放棄が向いているのは、たとえば次のような場合です。
- 借金や保証債務が、財産より明らかに多い
- 財産がほとんどなく、負担の大きい不動産だけが残る
- 相続の争いに関わりたくない
期限は原則3か月
自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます。この期間を「熟慮期間」といいます。
- 財産の調査に時間がかかる場合は、期間内に申し立てれば、期間を延ばしてもらえることがあります。
- 3か月を過ぎると、原則として放棄できません(例外的に認められる場合もあるため、過ぎてしまったら早めに専門家へ)。
してはいけないこと
期限内でも、相続財産を「処分」すると、相続を認めた(単純承認した)とみなされ、放棄できなくなることがあります。
- 家や車を売る、壊す
- 預金を引き出して自分のために使う
- 価値のある家財を形見分けや処分で持ち出す
片付けや遺品整理を急ぐ前に、放棄するかどうかを先に決めましょう。葬儀費用の支払いなど、認められる範囲もありますが、判断が難しいときは専門家に確認してください。
放棄した後の家の管理(2023年4月の改正)
以前は、放棄した後も、次の人が管理を始めるまで家を管理する義務がある、とされていて範囲があいまいでした。2023年4月の民法改正で、放棄した時点でその家を現に占有している人(実際に住んでいる、鍵を持って使っているなど)だけが、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ程度の注意で保存する義務を負う、と整理されました。
遠方に住んでいて家を使っていなかった人は、原則としてこの義務を負いません。ただし、実家に住んでいた・管理していた人は、引き渡すまで責任が残ります。
放棄すると次の人に移る
子が全員放棄すると、相続の権利は親の親(祖父母)、それもいなければ兄弟姉妹(亡くなった人のきょうだい、つまり叔父・叔母)に移ります。親族に迷惑をかけないよう、放棄することは事前に伝えておくのが一般的です。全員が放棄した場合、家は相続財産清算人が管理・処分することになりますが、その申立てには費用(予納金)がかかります。
この記事は2026年10月時点の制度にもとづく一般的な説明です。放棄するかどうか、何が処分にあたるかは、個別の事情で判断が変わります。期限があるため、早めに司法書士・弁護士にご相談ください。